ようこそここは俺のチラシの裏だ。

専門学校卒のぽんこつえんじにあが個人事業主になって書いているただの日記。

【読書感想文】弱いSEと強いSEの、嘘とかレビューとか匿名ダイアリーとか、同じ業界人として思う所とか。【本編】

前段

さて、この【読書感想文】の前段に関してはこちらに纏めてありますのでそちらを御覧ください。

といっても大した事書いてないので、別に前段読み飛ばして本題直入りでも全然構いません。

sugaryo1224.hatenablog.com

本題

件のレビューで気になる指摘。

賛否ともにですが、件のレビュー指摘で気になるものがあったので、それを幾つかピックアップします。

引用1

まず、1回でも名刺交換したら取引企業として扱う会社が存在するため規模が小さい割に名だたる大企業をたくさん載せてる会社は危ない。

面接まで進んだら取引企業との関係と業務について具体的にどんな事をしているか聞いてみよう、口ごもり始めたらその会社の面接官はバカか主な取引がないのに載せている事になる。

名だたる大企業とちゃんと取引している会社もある。ミスリードとなるので取引企業で判断しない方がいい。面接官が技術者ではないケースもあり、そんなに勘ぐってくる新卒は落とすから注意。

これは概ね同意見。

大きな会社で、人事・総務の人間(つまり開発に直接関わらない人間)が面接する事は多いし、面接担当の人間が全ての取引に関して仔細に把握している方が珍しいまである。
ぼくの一社目の会社(中堅規模のSIer)はまさにそんな感じだったし、会社規模が大きくなればそういう事も普通にあると思う。
って言うか、開発系部署の人間だって、別部署(例えば開発一部、二部、三部と別れているような大きな会社の話ね)の開発案件の細かい事なんか知らない方が普通じゃない?

少なくとも、ぼくはそうでした。

それだけを基準にして判断してしまうと、勿体無い判断ミスをする事もあるから、これに関しては【弱いSE】に対する【強いSE】のレビュー指摘はごもっとも。

と言うか、どうせ面談の時に質問した所でその真偽なんか確認しようがないんだから、聞くにしてももっと別な事を聞いたほうが良いんじゃないか説。

引用2

そんな書き方をする企業は客先で派遣された自社の社員が何をやっているか把握していないだけでなく、SES派遣をメイン事業としている可能性がある。

SES派遣という言葉はない。ここが致命的にこの記事が間違っているところ。SESつまりSEサポート契約は「準委任」という定義であり派遣ではない。

この指摘は本題に対して不適切な指摘。

ここが致命的にこのレビューが間違っているところです。

情報としては間違っていない。

SES派遣という言葉はない。

この言葉自体に大きな誤りはありません。

一般に契約の種類として「請負契約」「準委任契約(※)」「派遣契約」という3種類があります。

「SES契約などというものは法的には存在しない」と言うのは、まぁ正しい情報です。

※「準」が付かない「委任契約」ってのも存在するけど、これは法律行為に限られるので民間システム会社とかの場合は関係ないです。

但し指摘としては間違っている。

法的用語として存在しないこの「SES契約」と言う物が実際にこの業界でまかり通っており、しかもその大半が偽装請負だったり何だったりと『かなり黒い実態』だと言うのは皆さんご存知の通り。

【弱いSE】の記事はその事に対して注意喚起しているのが主題であって、法的にそんな言葉はないって言う指摘は的外れもいいところです。

レビューという表現を使われているのでそれに合わせると「指摘誤り」といった所でしょうか。

※まぁ「SES派遣」という表現はぼくも聞き慣れず、どちらかと言うと「SES契約」、或いは単に「SES」という事の方が多いと思いますが、そんなことは大きな問題ではありませんね。

この辺のSESまわりでは色々と書きたい事もありますが、ちょっと本題から逸れまくりんぐなのでこの辺にしておきます。

まぁ、詳しく知りたい人は米村さんのブログとか読めば良く解るよw

引用3

引用2と被るんだけど。

面接まで進んだら客先での主な仕事と単独派遣かチームで派遣か聞いてみよう、ほとんどの会社が「派遣先によるので何とも言えない」とか「セキュリティの都合上くわしく説明できない」とか「1人での派遣もありうる」と答えるはずだ。その時点でSES派遣をメイン事業としている可能性が非常に高い、その会社はやめよう。

そもそも、派遣契約なら顧客が指揮系統を持つので、そうなった場合は人材派遣業でありIT企業ではない。SES契約は運用保守の常駐作業などでしか結べず著者の言うSIerではない。おそらく請負契約になる。ただ、請負だと一人常駐は違法になる(偽装請負)。このあたり、誰かに知恵を入れられて誤解しているのではないか。

それはその通り。

「派遣契約」に対して正しく説明されています。

こちらの「レビュー指摘」に関しても、言っている事自体に間違いはありません、正しい知識を持っていらっしゃいます。

でも本題はそこじゃなくて。

先の「指摘誤り」と全く同じ話なんで割愛しても良いんですが。

なぜ【強いSE】は『総て法的に正しい事が遵守されている』前提で喋っているのでしょう?

そうじゃないからこそ【弱いSE】は『この業界の実態を注意喚起として』匿名ダイアリーに投稿したわけですよね。

この業界の実態を知らずに入ってくる新卒エンジニアに対して。

そこんところを正しく認識できていないように見受けられます。

それともマジでこの業界(の末端の方)の実情を知らないのでしょうか。

このあたり、誰かに知恵を入れられて誤解しているのでは?

どちらにせよ、レビュー指摘としては不適当、差戻しです。

引用4

理由は利用実態がない制度は絵に描いた餅状態になっていることが多く、福利厚生や社内制度が事実上存在しない会社もあるからだ。

だからといってそれを面接で言うわけないでしょ。

これはホントその通りwww

「こういう質問をした方がいい」って言う【弱いSE】案に共通して言える事だけど、全体的に「それを聞いてどうするの?」って言う質問が多い気がする。
つーか、ぶっちゃけブラックな会社であればあるほど嘘をつくんだから、そんなの聞いた所で問題の解決になってない。

そして、制度として存在するのであれば、それが形骸無実であろうがなかろうが、別に嘘にはならないでしょう。
そもそも従業員側にそういう制度を利用しようっていう意識が低い場合だって大いに有り得るんだし、利用実績が無いからと言ってそれを何でもかんでもNG判定にするのはちょっと乱暴
(まぁ、利用実績の低い制度を無駄に残しているのであれば、社内制度が保守的なんだろうな、とは思うので別な意味でNGだけど)

もちろん、制度はあるのに色々と難癖をつけてその制度を利用するのを邪魔してくる会社があるのは事実だけど、そんなん面接という一種アウェーな場でどうやって判断すりゃいいのさ?

引用5

元引用省略

クリーン・・。一応契約なので、クリーンではある。クルーンではないかもしれないが。

いや、契約だろうが何だろうが違法なもんは違法。

契約だからといってクリーンともクルーンとも断言する根拠にならないでしょう。

恐らく【強いSE】の人は「民法と契約書なら契約書の方が効力が上」という原則(契約自由の原則)を知っているのでその事を言ってるのでしょうが、 だからといって他の法に触れるような事が書いてあれば契約書といえどアウトなもんはアウトなんで、契約書だからクリーンってのはちょっと飛躍じゃないですかね。
(それこそ、SES契約だなんだと言ってても実態が単なる偽装請負ならアウトなもんはアウトですよね)

まぁぼくは法律に疎いのであまり突っ込んだ指摘は出来ませんが。

引用6

一昔前はSES派遣と言っても客や他の派遣社員と一緒にマネジメント・開発・構築・運用・保守に携わる事が出来たため主に新卒や新人を派遣する時に利用された。 営業からすれば「使えない子だけど最安値で派遣するので使ってやってください」みたいな意味合いがあったと言う。

だから、これは派遣契約ですよね。SESで、「使えない子」はありえない。

SESとは、

・完成責任はない(最終成果物がなくてもよい)

瑕疵担保責任はない(作ったものに責任は問われない)

・期間の定めがある

・業務の遂行については一般的に委託者への「報告書」をもって行う(成果物がないから)

・指揮命令権は受託者(注文者には指揮命令権はない)

となっていて、派遣とは全く違う。お客さんに指示する権利はない。逆にお客様よりスキルがないとおかしい。

前半部分

だから、実態は派遣契約なのにSES契約という法的に存在しないモヤッとした言葉を使って偽装請負はじめ違法行為を罷り通しているあくどい会社がありますよ、って言う話ですよね。

本来無いはずの完成責任を求めてきたり、本来無い筈の瑕疵担保責任を問うてきたり、本来ダメなはずの多重派遣が普通に行われてたり、指揮命令権があってはならないのに実際は指示が出ている。

「SESの説明として間違っている」とか「派遣契約の説明として間違っている」じゃなくて、 「SESという便利な言葉を使ってそう言う事(違法行為)をやっている所があるよ」って話をしてるんじゃん。

後半部分

良く解らなかったのは「SESで使えない子は有り得ない」って言うところ。

これに関してはどういう意味なのか、ぼくの理解力では追いつかなかった。

もしかしてこういう意味だろうか。

『SESにはその契約内容から「完成責任」も無ければ「瑕疵担保責任」もない。
ただ単に一定期間就労して労働力を提供するのみであり品質云々とは無縁である。
故にSES契約に於いて「出来る」も「出来ない」もなく、
必然的に「できない子」と言うのは定義上存在し得ない。』

って事を言いたいのでしょうか?

言わんとする事は解らんでもないが、やはり実態に即しているとは思えない。

以降、上記ぼくの「解釈の仮説」が正しいと仮定した上で述べます。

いや、SESだろうがなんだろうが出来ない子はおるやろ。

この業界ではすげーーーーーーーよくある「セット販売」の話をします。


ベテランのエンジニアAさんが居て、この人は普通にSESでやると単価100万で売れます。

ある時この会社にプログラミングが全く未経験の新人B君がやってきました。

SESで出そうとしたら本来であれば値が付きません。

そこで会社の営業はこう言いました。

営業「Aさんは本来なら100万なんですが、B君と一緒に買ってくれたら一人頭60万、あわせて120万で良いです。」

それを聞いた顧客はこう考えました。

顧客「Aさんは正規の100万と考え、B君は戦力にならないとしても20万で雑用をやらせれば事務員を雇うよりは安上がりだな。」

見事、契約は成立し、AさんとBくんは同じ案件にアサインされる事になりました。


金額のアレはまぁ適当に書きましたが、ベテランと新人の2人1組で売られる、これが通称「セット販売」と呼ばれるものです。

このセット販売の結果、B君がどうなるかは解りませんが。

この売り方に対する良し悪し是非に関しては置いとくとして、ただこの場合明らかに「B君」は「できない子」という扱いですよね。

勿論、本来であれば自社内できちんと教育して育てて、一人前になってから外に出すべきだとぼくは思います。

ただ、今はべき論ではなくこの業界の実態の話をしてるんですよね?

SESだからできない子など存在しない、ってのは、一種の綺麗事じゃないでしょうか。
(勿論、その綺麗事が現実の事になってくれれば良いなぁ、と思いますけどね)

さいごに

SESで客先常駐で私は成長できた。なので案件次第・実力次第。 そして、それが違法労働に結びつけるのは無関係だと思う。

なぜ無関係なのか、特に根拠が示されていないんでアレですが、

こういうのを一種の「生存バイアス」っていうんでしょうね。

おまけ

「IT業界を研究する学生の方にオススメの本」と題して、こんなのが紹介されていました。

※画像込みで引用がキツかったので、スクショ撮りました。

f:id:sugaryo1224:20180130210625j:plain

これね。

激しく同意します。

ぼくも、木村さんの本や記事は読んで損はないと思います。

ちなみにぼくも過去にオススメだよって日記書きました。

sugaryo1224.hatenablog.com

総括

【強いSE】の言わんとする事は、個人的には解らないでもない所が多い。

でも、何と言うか『【弱いSE】の話したいのはそこじゃないよね?』って言う、ズレたレビュー指摘が多いように感じる。

また、指摘自体も、すぐ上に書いた通りバイアスの掛かった意見が散見される。


ここで【弱いSE】の本文から一部引用する。

先ほど記した技術力が身につかない上に低賃金なポジションに着いてしまった人よりも発言力があり業界内で幅を利かせている事が多い。

そんな人は「派遣先で技術的な仕事が出来なかったのは本人に問題があるのでは?俺はできてたし」と言い実態を知ろうとしないため問題を自己責任で処理し、表に出来にくい空気を作ってしまっている。

結果として【強いSE】はナチュラルにこれに該当しており、レビュー指摘と言いながら【弱いSE】記事の一部を自ら証明しちゃってんじゃないかなぁ、って気がする。