ブラック企業を根絶する為には雇用の流動性を上げる必要があり、その為にやるべき3つの事を考えてみた。
ブラック企業を根絶するためにやるべき事。
それは、雇用の流動性を上げる事だと思います。
雇用の流動性を上げるとどうなるか。
雇用の流動性が上がると、人はより条件の良い所を求めて動くようになり、条件の良い所に定着するようになる。
すると、良い企業は戦力増強して競争力が上がり、社員へ還元できるものも増える。 逆に、悪い企業、いわゆるブラック企業などは、人が定着せず離れていくので自然と消えていく。
そう言った良いサイクルが生まれると思う訳です。(希望的観測)
ちなみに、ブラック企業が何故無くならないのかと言うと、そりゃ話は簡単で、そこの社員が辞めようとしないからですよ。
雇用の流動性が低いからこそ、不幸にしてブラック企業に入ってしまった人も簡単にはそこから出る事が出来ない。 気付くとブラック企業と一体化して、被害者だった筈のその人は加害者と同化して次の被害者を産んでいく。 ゾンビゲーやミイラゲーのように、どんどんそうやって数が増えていく。
感染拡大して増殖していくのがブラック企業の何より怖い所です。
雇用の流動性を上げる為にやるべき事。
では、雇用の流動性を上げる為に、何をすれば良いか。
Twitterの方でも発言しましたが、ぼくは以下の3点が重要だと考えます。
- 解雇規制の緩和
- 再雇用の促進
- 新卒一括採用の見直し
以下、この3点について軽く解説してみます。
雇用流動性を上げる為にやるべき3つの事。
①解雇規制の緩和
簡単に一言で言うとこうです。
企業が社員をもっと簡単にクビを切れるようにしろ。
と言う事。
会社が社員のクビを切るのはそう簡単には認められていない。
まぁ、こう書くときっと感情的に反発して来る人が多いと思うんです。
それでも会社が社員を解雇し易いようにすると言うのは必須事項だと思っています。
この俺を怒らせたな、貴様はクビだ、明日から来なくていい!!
みたいなセリフは(古い)ドラマなんかではよく聞きますが、これ完全に違法なんですって。
(完全に違法は言い過ぎなんだけど、要は部長や社長と言った個人を怒らせた程度の事ではクビは切れない、という話です)
業務遂行於いて能力不足だと判断され、試用期間が切れたが正式採用されず退職となった。
或いはこんな話も聞きますが、どうやらこれもまず正当な解雇理由として通らないそうです。
(能力不足が解雇理由として一切認められない訳では無いが、能力不足を理由に解雇するのであれば、本当にびっくりするくらい相当にダメダメなレベルじゃないとダメ)
ぼくも最初これを知った時は「えっ、じゃあ一体何の為の試用期間なんだよ?」って思いましたが、少なくとも現行法ではそのようになっているそうです。 個人的にはちょっと腑に落ちない部分はありますが、さりとて法律は法律ですので、きちんと守りましょう。
解雇に関する法律
なお、これらに関する根拠として労働契約法というものがあり、以下のように定められています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
(労働契約法 第16条)
ということで。
現実的には普通解雇と言うのは簡単には実行できず、整理解雇(会社が傾いた時のリストラ)か、若しくは会社的というよりは社会的な制裁としての懲戒解雇が現実的と言う事になります。
あくまで、法的な話ですが。
企業は簡単に社員のクビを切れないのだから、新規採用に対して慎重にならざるを得ない。
かように従業員・労働者というのは、法的にはかなりガチガチに保護されている訳です。
過保護、と言って差し支えないと思います。
この為、真っ当に法律を守るきちんとした会社は、これらの採用リスクを負う訳です。
この辺の話は以前にも書いたので、こちらを参照してください。
リスクを企業だけに押し付けていては誰も幸せにならない。 - 我々は賢いので。
企業が簡単にクビを切れないが故に、新規採用の門戸は狭くならざるを得ない。
すると再就職が難しくなり「辞める(転職する)」と言う事の難易度が上がる。
故にブラック企業に入った人が中々抜け出せず、ブラック企業が生き長らえる。
こうした悪循環を生み出しているのが労働者の過剰保護だと思うのです。
②再雇用の促進
さて。
以上で解雇規制の緩和が重要である事は概ね理解して頂けたかと思います。
とは言え、現状で解雇規制の緩和だけをやった所で労働者の立場が一方的に弱くなるだけですので意味がありません。
セットでやる必要があるのが再雇用の促進です。
具体案が豊富にある訳じゃないんですけど、ぼくがやって欲しいのは以下の2点。
- 紙文化(主に履歴書)の撤廃
- 就職に必要な書類手続きの削減
手書きの履歴書は何の為に存在するか
まーまず、手書きの履歴書なんて無駄でしかないのでいい加減撤廃しましょう。
むしろ履歴書は原則として電子書類ベースでやるように変えましょう。
そもそも、何故手書きの履歴書と言う物が重要視されていたのか?
こんな説があります。
それは大昔、時代背景として教育水準が今ほど高くは無かった時代に、最低限の教養を受けて来た事の証左として、手書きで履歴書を書けるだけの能力がある事を示す必要があった。
魁クロマティ高校と言う漫画では「テスト用紙に自分の名前さえ書ければ合格する」なんて表現が出て来ましたが、まぁ要するにそう言う事ですね。
即ち手書きの履歴書というのは、ある程度の教育水準の社会に於いて、最低ラインの足切りをやる為のシステムだった、と言う事です。
手書きの履歴書から電子の履歴書へ
さて。
現代の教育水準は、手書きの履歴書が機能していた時代に比べて圧倒的に高くなっているのは間違いないでしょう。
つまり現代に於いて、手書きの履歴書がこの足切りシステムとして機能しているとは言い難い、と言う事になります。
むしろ時代は変わったのだから、最低限のPCスキルを持っている事の証左としてOfficeソフトで作成した電子の履歴書を提出する事を、現代の足切りシステムとしてパラダイムシフトするべきです。
(エンジニアに至ってはもうそれすら時代遅れで、GithubやQiitaやLinkedInのアカウントを提出するだけで良いとか、簡単なソースコード提出で済ませるってのもアリですよね)
就職に必要な書類手続きの削減
もう一つ、これはぼくが前々から(転職するたびに)気になっていた事なんですが。
退職、入社に関して必要な書類多過ぎませんかね。
何より理解できないのは、入社に関して「保証人の同意書」みたいなのを書かされるやつ。
あれ何の為にやってんだかいまいち理解できないし、親族がクズ人間だったから縁を切らざるを得ない人とかが理不尽なハンデを負わされるだけだから、百害あって一利なしだと思うんですよね。
基本的に「親がクズ人間」とか、「親戚がクズ人間」って言うケースに対して無力と言うか、想定不足過ぎるシステムが未だに生き残ってるの、ちょっと納得いかないんですけどね。
アレはマジで止めた方が良い。
生まれの幸運不運がそのまま将来や人生に直結して修正不能に陥るって言うのは完全な設計不備ですよ。
そう言うのが必要なく、個々人の努力や能力がもっとストレートに反映されるような社会であるべきです。
③新卒一括採用の見直し
いわゆる「新卒カード」というもの、アレの価値が不当に高すぎるのが問題だと思う訳です。
新卒カードの価値が不当に高すぎる
人材の流動性向上はブラック企業対策にもなる。
— うちくん (@norinoriuch) 2018年3月15日
ダメなら次行きゃいいし、次に行ければ前のところをボロクソ言えるだろうし。
ボロクソなところは人が入らずに潰れるしかない。
やっぱ新卒の価値が不当に高いよ。
現状は文句言わない逆らわない兵団作ろうというシステムだな。
この辺の会話でほぼほぼ言いたい事は纏まっちゃってるんで、特に付け加える事もないんですけど。
終身雇用制度と言う神話がまだ生きていて、年功序列にもそれなりの合理性のあった時代。
そう言う時代に関しては、まぁ新卒一括採用と言う文化もそれなりに親和性があったのかと思います。
でももう今は時代が全然違いますよね。
就職活動ってトラウマじゃないですか。
新卒一括採用に向けた就職活動、あれってただのトラウマを植え付ける儀式じゃないですか。
するとこう考える人間が少なからず出て来ると思うのですよ。
またあの地獄のような就職活動に戻るくらいなら、多少ブラックでも会社に残った方が良い。
折角あんな苦労を味わって手にした正社員と言う地位をそう簡単に手放せる訳がない。
当然の発想ですよね。
新卒カードを不当に高く設定すると言う事は、それと引き換えに得た正社員と言う地位をも不当に高くしているに過ぎない訳ですよ。
つまり、ブラック企業の思うつぼ、ってやつです。
めちゃくちゃ価値の高い新卒カードを払って得た正社員と言う位置なのだから、新卒カードを切ったぶんの価値を回収しなければならない、みたいな発想に至る訳です。
そもそも、新卒一括採用に向けた就職活動って、下手すりゃ仕事以上にキツい訳ですよ。
だからこそ、転職活動で再びあの就職活動のような地獄を見るくらいなら、相対的にマシな会社にしがみ付いた方が良い、と考えてしまう訳ですよ。
つまりあれはただの洗脳です。
洗脳のやり方にはある一定のプロセスが存在します。
ロバート・リフトン博士
とかでググれば色々出て来ると思うのでここで詳しく説明するのは避けますが。
いわゆる「人格破壊による洗脳」と、新卒一括採用に向けた就職活動からの入社って、プロセスが物凄く酷似してるんですよね。
ましてやブラック企業に入ってしまうと、新入社員研修と言う名目で洗脳プロセスを二重に経験する訳ですよ。
そりゃあまともな判断力なんか残る訳ねーんだよな、って。
参考: 洗脳とは、以下の原理によるもので、基本的な手順は以下の5つです。 【隔離】 ...
参考: 戦争で使われた10段階の洗脳テクニック | ネットビジネスの研究
「雇用の流動性を上げる」と言う観点からすると、これほどの悪魔のシステムはありません、即刻撤廃すべきです。
結論
以上、改めて3点繰り返すと。
- 雇用の流動性を上げてブラック企業を撲滅するために、解雇規制の緩和が必要である。
- 雇用の流動性を上げてブラック企業を撲滅するために、再雇用の促進が必要である。
- 雇用の流動性を上げてブラック企業を撲滅するために、新卒一括採用の見直しが必要である。
と思います。